アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、炎症を伴う皮膚の病気で、主な症状は湿疹と痒みです。良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らないことが特徴です。
乾燥しやすく皮膚のバリア機能が弱い方や元々アレルギーを起こしやすい体質の方などに多く見られますが、そのときの体調(寝不足や過労)、精神的な状態(ストレス)によっても症状が異なることがあります。
また、ご家族にアトピー性皮膚炎や喘息、アレルギー性鼻炎などをお持ちの方がいる場合、アトピー性皮膚炎を起こしやすくなることがあります。
このように、アトピー性皮膚炎は様々な要因が複雑に絡み合って起こる病気です。
一人ひとりの患者様の要因を鑑み、症状をコントロールしていくことが治療への第一歩です。
症状
痒みがあり、赤みを伴う湿疹が額や耳の周り、首、手足の関節の内側など体のいろいろなところにできます。左右対称にできることが多く、慢性的に繰り返します。
検査
アトピー性皮膚炎の原因を特定するために、血液を採取し、アレルギー検査を行うことがあります。(保険適応)
小児の場合は指先から少量の血液をとり、41種類のアレルギーを調べる検査が行えます。
治療
外用薬
- ステロイド外用薬
- アトピー性皮膚炎の炎症を抑制する薬剤です。症状に応じて、最適な強さのステロイド外用薬を処方します。
- 免疫抑制剤
(プロトピック軟膏) -
体の過剰な免疫反応を抑えて、アトピー性皮膚炎の炎症をおさえます。 - ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(コレクチム軟膏)
- ヤヌスキナーゼ(JAK)とは、細胞外からの様々な刺激を細胞内に伝達する酵素のことです。そのヤヌスキナーゼ(JAK)から伝達される、炎症を引き起こすシグナルをブロックすることで、アトピー性皮膚炎による皮膚の炎症や痒みを抑制します。コレクチム軟膏は、アトピー性皮膚炎の外用薬としては約20年ぶりに承認された新しい薬で、世界初の非ステロイド性の外用JAK阻害剤です。
- PDE4阻害薬
(モイゼルト軟膏) -
PDE4(ホスホジステラーゼ4)を選択的に阻害することで炎症性サイトカインなどの化学伝達物質の産生を抑制し抗炎症作用を発揮します。ステロイドの維持期に置換して使うことで、ステロイドの使用を減らせることが期待できます。
ステロイド外用薬の副作用について
ステロイド外用薬の副作用で皮膚に色素沈着が起こるのではと心配される方も多いですが、色素沈着はステロイド外用薬の副作用ではなく、皮膚の炎症が長く続いたことによるものです。しかし、ステロイド外用薬を使用すると、皮膚が薄くなるなどの副作用が起こることがあります。当院では、患者様のアトピーの状態に合わせてステロイド外用薬の強さを調整しています。また、ステロイド外用薬を使用することを不安に思われている方には、症状に合わせてステロイド以外のお薬を処方することも可能です。不安なこと、心配なことがございましたら、ご遠慮なくお尋ねください。
内服薬
- 抗ヒスタミン薬
- アレルギーの原因となる物質が体内に入ると免疫が反応してヒスタミンという物質が放出されます。このヒスタミンは、アトピー性皮膚炎での皮膚の痒みの原因のひとつと考えられています。抗ヒスタミン薬はヒスタミンの作用を抑え、痒みを抑える効果があります。
- 免疫抑制剤
- アトピー性皮膚炎で過剰に働いている免疫機能を抑制する内服薬です。他の治療での効果がみられない成人の最重症・難治例に対して短期的に使用します。
- JAK阻害剤
(リンヴォック、サイバインコ、オルミエント) - 炎症の信号を伝える経路のひとつである「JAK-STAT(ジャック・スタット)経路」をブロックすることで、サイトカインが受容体にくっついても炎症やかゆみを引き起こす信号が伝わらないようにし、アトピー性皮膚炎のかゆみや皮膚の炎症を抑えます。 国内では3種類のJAK阻害剤が承認されており、症状により使い分けます。 副作用の報告もあるため、始める場合、採血や胸部X線が必須となります。 検査に問題なければ、12歳から使用できます。即効性があるため、受験生や短期間でまずかゆみを良くしたい方にもおすすめです。
注射
- 抗炎症効果のある注射
- ノイロトロピン注、強力ネオミノファーゲン注、ポララミン注など
- ヒスタグロビン注射
- ヒスタグロビンとは、アレルギーを体質から改善して、症状を治す注射です。痒みなどのアレルギー症状を改善し、アトピー性皮膚炎の悪化や慢性化を防ぎます。国内での献血由来の血液を原料とするので、特定生物由来製品(生物製剤)に分類され、ヒスタグロビンを使用した方は献血を控えていただく必要があります。
- 生物学的製剤
(デュピクセント) -
デュピクセントは、生物学的製剤と呼ばれる注射です。アトピー性皮膚炎は、Th2細胞から出される伝達物質であるサイトカインIL-4やIL-13などが受容体に結び付くことで、皮膚のバリア機能の低下や炎症、かゆみをもたらしていると考えられています。デュピクセントは、このサイトカインIL-4やIL-13が受容体に結び付くのを阻害することで、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみを抑えることができます。ただし、誰でも使用できる注射ではなく、他の治療での効果が不十分な中等症~重症の成人患者であることなどの条件があります。条件をクリアすれば、生後6ヶ月から使用できます。 - 生物学的製剤
(ミチーガ) -
アトピー性皮膚炎のかゆみにはIL-31が中心的な役割を果たすと考えられており、ミチーガはIL-31受容体をターゲットとした日本初、世界初の生物学的製剤で、かゆみ抑制効果が期待できます。 誰でも使用できる注射ではなく、他の治療で十分な効果が得られないことなどの条件があります。条件をクリアすれば13歳以上から使用できます。
紫外線治療
- ナローバンドUVB
- ナローバンドUVBは、紫外線の一種であるUVBの中でも、さらにアトピー性皮膚炎に効果が認められる波長のUVBだけを患部に照射するものです。副作用が少なく、高い治療効果が得られます。また、一度に照射できる範囲が広いため、広範囲の場合に多く用いられます。
アトピー性皮膚炎のスキンケア
アトピー性皮膚炎の皮膚は、皮膚のバリア機能が低下し、外からの刺激やアレルゲンが侵入しやすい状態になっています。症状が治まっていても油断せず、適切なスキンケアを毎日続けて症状を予防することが大切です。
- 清潔
- 皮膚には、目に見えない多くの汚れ(汗や雑菌など)がついています。汚れがついたままにしておくと、汚れが刺激となり炎症や痒みがひどくなることがあります。毎日の入浴やシャワー時には、よく泡立てた洗浄料でこすらないようにやさしく皮膚を洗い、しっかり洗い流しましょう。
- 保湿
- 洗ったあとは保湿剤を使い、十分にうるおい補給をすることが大切です。保湿剤は刺激が少ないものがよいでしょう。(当院では、セラミドミルクローションという保湿剤をおすすめしております)洗う時と同じように、こすらないようにやさしく塗り広げましょう。入浴後だけでなく、皮膚の乾燥が気になる時には何回でも塗ることをおすすめします。
Q&A
- Q.短期間で治りますか?
- A.短期間では治りませんが、正しい治療を継続して行うことで、湿疹などの症状が出にくい状態にすることができます。症状の出にくい状態が長く続くように、掃除や布団干しをこまめに行い、悪化の原因になる物質を減らしていくことも有効です。
- Q.どのくらいの頻度で通院したら良いですか?
- A.症状が出ているときは週に1~2回の通院をおすすめします。
- Q.炎症が治まったら、治療をやめてもいいですか?
- A.炎症を抑える薬をきちんと使うと、ひどい症状でもきれいに治っていきますが、見た目には治ったように見えても、再び炎症を起こしやすい状態にあります。症状が落ち着いても治療を継続することで、症状がぶり返すのを抑制できることが多くありますので、炎症が治まっても油断せず、治療を継続していきましょう。
- Q.医療費はどのくらいかかりますか?
- A.治療内容により異なりますが、生物学的製剤やJAK阻害剤は多くの方が高額療養費制度の対象となり、医療費の負担を減らすことができます。 特に、お子様は子供医療費助成制度の使用によりかなりの負担を減らせる可能性があります。 詳しくはスタッフにお尋ね下さい。
治療後のご注意
- ◎ 自己判断で治療を中止しないようにしてください。
- ◎ 定期的に受診していただくようお願いいたします。
ご予約・お問い合わせ
アトピー性皮膚炎の受診はご予約不要です。
ご不明な点があればお電話か予約フォームにてお問い合わせ下さい。