粉瘤(アテローム)
粉瘤(アテローム)とは
粉瘤(ふんりゅう)は、アテロームとも呼ばれる、良性皮膚腫瘍の一種です。何らかの原因で、皮膚の内部で一部の皮膚が袋状になり、そこに垢や皮脂が溜まっていく状態です。初期の小さな粉瘤は白色~肌色で、痛みや赤みなどの目立った症状はありませんが、徐々に大きな袋状へと変化します。皮膚表面の近くにできるため、細菌感染を起こしやすく、痛みや赤み、腫張や熱感が生じ、排膿処置が必要になる場合もあります。大きくならないうちに、早めの受診が重要です。
粉瘤(アテローム)の原因
粉瘤が発生する原因は様々で、はっきりとした原因がわからないこともしばしばです。原因の一つとして、外傷・打撲などのケガで皮膚の一部が内側に入り込んでしまうことで起こったり、ウイルス感染によって発生することもあると言われています。また、粉瘤は良性腫瘍であり、悪性化することはほとんどないと考えられています。
粉瘤(アテローム)の種類と特徴
粉瘤(アテローム)の一種には下記のようなものがあります。
- 1.表皮嚢腫
- 2.外毛根鞘性嚢腫
- 3.多発性毛包嚢腫
粉瘤の特徴として、
・皮膚が盛り上がった、数ミリ~数センチ(大きな場合は10センチ以上になることもある)の丸いしこり
・しこりの中央に黒い点(開口部といいます)がある
・臭いがあることがある
このような症状がある場合には、皮膚科の受診をおすすめします。
なお、脂肪のかたまりと認識されている場合が多いですが、脂肪のかたまりと粉瘤は別物です。脂肪のかたまり(脂肪腫・リポーマ)は、化膿や臭いなどは一切なく、痛みもありません。
粉瘤ができたら、気を付けること
「しこりができてる?」と思ったら、すぐ受診!
粉瘤の初期症状はしこりがあるかな?と感じる程度で、皮膚表面には症状がないことも多いため粉瘤ができたと自覚することが難しいです。初めは小さな袋ですが角質や皮脂は外に出ることがなく、どんどん溜まっていき、粉瘤は大きくなっていきます。
粉瘤には小さな穴が開いていて、そこに菌が入り込むと感染が起き、炎症を引き起こしてしまいますので、炎症が起こる前にしこりがあると感じる時点で受診していただくことが大切です。炎症が起きてからの処置となると、排膿処置後に連日通院が必要になったり、炎症が治まってから再度、袋の摘出が必要になったりと時間的にも体力的にも大変です。
また、粉瘤を脂肪のかたまりやニキビと間違えていることも多く、特に気にしないまま放置されている方もいらっしゃいます。脂肪のかたまりやニキビも治療可能ですので、しこりがあれば早めに受診をされてください。
粉瘤を自分で潰そうとするのは危険
ニキビのような感じで、自分で潰せそう…と思われる方もいらっしゃいますが、自分で潰すのは絶対に避けて、受診をお願いします。自分で潰すと潰したところから簡単に細菌が入り込み、あっという間に大きくなり、炎症を起こします。また傷痕が残ることも多く、粉瘤がなくなってもきれいになりません。
粉瘤(アテローム)かどうか鑑別診断をしたほうが良いもの
粉瘤(アテローム)と間違えられやすい他の疾患
粉瘤には、一般の方では判別しにくく、間違えられやすい他の疾患があります。間違えられやすい疾患の中には悪性の疾患や良性の場合で放置せずに治療をした方が良い疾患もありますので、鑑別診断をしたほうが良いでしょう。間違えられやすい主な疾患は以下のようなものがあります。
- 石灰化上皮腫
- 皮膚の一部が石灰のように硬くなる良性の皮下腫瘍の一つです。少し黒っぽく、青黒い色に見えることもあります。粉瘤よりも固く、触れると皮膚の下に石のように硬いしこりを感じます。無症状の場合が多いですが、押した時の痛みを感じることはあります。
- 脂肪腫
- 脂肪細胞の良性腫瘍です。表面は肌の色と同じ色です。皮膚の下に少し弾力のある柔らかいしこりができます。皮膚との癒着がないので、皮膚の下で動きますが、小さくなることはありません。
- ガングリオン
- 中にゼリー状のような物質の詰まっている良性の腫瘤です。通常痛みは伴いませんが手背の関節に出来ると手をついた時に痛みを生じることがあります。
- 類皮嚢腫(デルモイドシスト)
- 胎生期の遺残物で円形の良性腫瘍です。通常、無痛で表面が平滑で、皮膚との癒着はありません。
- 多発性脂腺嚢腫
- 体幹や四肢に直径1cm大までの大小の嚢腫が多発する良性の腫瘍です。皮膚の色や淡黄色で、無症状のことが多いですが、炎症を起こすと痛みや腫れを伴います。
- 耳瘻孔
- 耳の付け根付近に小さな穴が生じる先天性の疾患です。感染を起こし、腫れや痛みが出た場合、耳周囲の炎症性粉瘤と間違えられやすい疾患です。
当院の粉瘤(アテローム)手術
粉瘤の完治には、手術が必要です。
粉瘤が細菌感染を起こして炎症が強い場合は、排膿処置を行うこともありますが、粉瘤は皮膚の内部に袋ができている状態ですので、この袋を取り除かないと炎症を繰り返す恐れがあり、袋を取り除くには手術が必要となります。
しかし、手術となると傷痕がご心配かと思います。
当院では、「くりぬき法」という方法で手術を行うことにより、傷痕を最小限に抑え、なるべく目立たないように配慮しています。
粉瘤(アテローム)手術の流れ
くりぬき法の場合
- 局所麻酔の注射をします。
- メスもしくはトレパン(円形の刃がついた器具)を用いて、粉瘤の中心に小さな穴を開けます。
- 粉瘤に溜まっている膿を排膿させます。
- 粉瘤の袋を取り出し、洗浄します。
- 縫合し、ガーゼで覆います。
粉瘤(アテローム)手術費用
診察・診断・手術・検査、すべてに保険が適応されます。
粉瘤(アテローム)手術のQ&A
- Q.痛みはないのですが、取ったほうがよいのでしょうか?
- A.粉瘤は良性腫瘍ではあるものの、いつ炎症が起き、痛みが出るかわかりません。また、完治させるためには、手術をするしか方法がありません。炎症が起こる前に、早めの受診・手術が重要です。
- Q.手術の痛みはありますか?
- A.局所麻酔の注射を行いますので、注射の痛みはございますが、麻酔が効いているため切開時の痛みはございません。また、なるべく少ない注射回数で局所麻酔が完了するように心がけています。
- Q.手術の時間はどのくらいかかりますか?
- A.約15分程度です。
- Q.予約なしで、すぐに手術できますか?
- A.基本的に当日に手術可能です。ただし、患者様の待ち時間が長くなる場合や粉瘤の症状によっては、後日ご予約を取っていただく場合もございます。
- Q.手術後にお風呂に入ることは可能ですか?
- A.基本的には、排膿処置の場合は、手術の翌日からシャワーは可能、切除術の場合は、出血が止まってからとなりますが個人差がありますので、詳しくはご来院時にご説明いたします。
- Q.手術後の来院は必要ですか?
- A.手術の経過を診せていただきますので、手術の翌日に一度ご来院ください。その後は抜糸の日に来院していただきます。
- Q.粉瘤ができているようですが、病院に行く時間がありません。自分で治療できますか?
- A.結論から言うと、自分で潰すことは絶対にやめてください。中身が出て一見なくなったように見えても、袋が残っているので再発の可能性が高いです。また粉瘤の袋と周囲が癒着しやすくなりますので、傷痕が残ることが多いです。お忙しいとは思いますが、お時間を作って皮膚科を受診してください。
粉瘤(アテローム)の予防法
粉瘤の原因は様々で、明確な予防法はありません。ただ粉瘤があると気付いたときになるべく早めに治療することで、大きくなるのを防いだり、細菌感染による痛みなどを予防することができます。
治療後のご注意
- ◎ 当日のご入浴はお控えください。
- ◎ 手術の内容により異なりますので手術後に詳しくご説明させていただきます。
ご予約・お問い合わせ
粉瘤(アテローム)の受診はご予約不要ですが、手術をご希望の際はご予約をお願い致します。
ご不明な点があればお電話か予約フォームにてお問い合わせ下さい。